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オリジナル絵の展示や、その時はまったゲーム絵、本の感想などごった煮です。
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 ゆめをみた。


 「お土産買ってくるから」
 「えーん、さみしいよー」
 「ホント、ちゃんと寝てるんだよ!」

 クラスメイトたちは、バスから身を乗り出し
 心配顔で私に声をかける。
 せっかくの修学旅行だというのに
 私は熱を出してしまってどうにも行けそうにない。
 主治医に止められてしまったのだ。

 走り去るバスを見送り、教室へ戻る。
 なぜか私は裸足で、白い白い雪の校庭に足跡をつけて歩く。
 しかし、其処は自分の通っている高校ではなかった。
 自分の通っていた小学校だった。
 廊下ですれ違う子供たちは皆、
 私が卒業生だと分かっているのだろうか。
 声をかけてくるでもなくチラチラと視線を向け通り過ぎていく。

 ふと、その子供たちの中に見知った顔があった気がした。
 …友人だ。友人に似ている。
 彼女に姉妹がいたろうか。そんな事を考えつつ
 そのうち、どの子供も自分の同級生である事に気づく。
 …ぞっとした。似ているのではない。友人たち本人だ。
 本能的に感じた。


 ここには小学生の自分がいる。
 そしてきっと その自分に会ってはいけない。


 不思議そうにこちらをみる子供たちが急に恐ろしくなって
 私は走り出した。
 いつもお世話になっていた保健室の先生に相談しようと思った。
 誰もいない廊下を走る。
 何故だろう、授業の時間のはずなのに
 誰かが廊下にある電子オルガンを弾いている。
 走っても走ってもオルガンの音は近づくことがない。
 給食室はまだ誰もおらずただ暗くひっそりとしている。
 保健室は下駄箱を横切って、職員室の向こうだ。

 息を切らせて下駄箱を横切ろうとした時
 下駄箱にいた少年と目が合った。


 「どうしたの、そんなにスカスカになっちゃって。」


 意味が分からず少年を見つめていると、少年も困ったように笑った。
 彼もかつての友人だった。


 「半分になっちゃってる。
  残りを教室に置いてきちゃってるよ。」


 彼が指差した廊下の奥には子供が立っていた。

 …ああ、私だ。

 私はこちらを見ている少女を見ながら
 無理をしてでもバスに乗るべきだったのだ、と悟った。


 ただ、バスに乗っていたクラスメイトの顔は
 一人も思い出せなかった。
 あの人たちは誰で
 バスは何処へ向かったのだろう。


 私はただ、こちらに歩いてくる少女を見、
 少年が笑いながら差し出した上履きを、静かに履いた。


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